普段は圧倒的に有線イヤホン派な僕なのだが、Bluetoothイヤホンの利便性は捨てがたい。とはいえここ何年もBluetoothイヤホンを買っていないので、最新のイヤホンが一体どんなものか気になってはいた。
今回SOUNDPEATSよりイヤホンを提供されたので、忖度無しでレビューを行う。
SOUNDPEATS Mini Pro HS
今回レビューするのがSOUNDPEATS Mini Pro HS。ハイレゾ認証がされているカナル型TWSイヤホンで、SOUNDPEATS製品の中では中級モデルになる様子。販売開始は2022年11月末と、レビュー時点で発売から約半年の新しいモデル。元々あったMini Proというイヤホンの改良版らしい。
販売価格は2023年5月現在で7980円だが、定期的にクーポンが配布されてもう少しお得に買える様子。実際この記事を書いている時点でも10%OFFクーポンが配布されていた。
- 本体
- 充電ケース
- USB Type-Cケーブル
- イヤーピース(S・M・L)
- 取扱説明書(日本語あり)
が付属。またSOUNDPEATSアプリを使うとイコライザー等のカスタムに加え、ファームウェアアップデートもできるようになる。
スペック
ブランド | SOUNDPEATS |
モデル | Mini Pro HS |
ドライバー | Φ10mmバイオセルロースDD |
周波数 | 20Hz-40kHz |
感度 | 不明 |
インピーダンス | 不明 |
Bluetoothバージョン | 5.2 |
コーデック | LDAC対応 |
通信距離 | 10m |
連続再生時間 | 8時間 充電ケースの使用で最大28時間 |
バッテリー容量 | 本体:45mAh ケース:300mAh |
マイク | 内蔵 |
アクティブノイズキャンセリング | 搭載 |
重量(実測) | 本体左右合計:9g ケース:27g |
ケース外寸(実測) | 約43×53×26mm |
軽量小型で持ち運びしやすいワイヤレスイヤホン
SOUNDPEATS Mini Pro HSの第一印象は「かなり小さい」だった。最近のTWSイヤホンを全く触っていないので、3年ぐらい前からの進化をひしひしと感じる。実寸で約43×53×26mmの充電ケースはイヤホン内蔵状態でも約36gしか無いので、カバンやポケットに入れておくのになんの支障もないだろう。
ケース外観はマットな質感で、金色の塗料がランダムに吹きかけられている。この金色が最初ホコリでもついているのかと思ったぐらいであまり高級感がないので、いっそマットブラックだけにしておいても良かったのではないかと思う。薄っすらと掘られているSOUNDPEATSのロゴと、その下にはLEDが見える。
裏面にはUSB Type-C端子が備わる。
マグネットでしっかり閉まる蓋を開けると中からイヤホンが出てくる。イヤホンもマグネットでしっかりと固定される仕様。ケース内にはあまり余裕がないので社外イヤーピースに変えるときには相性に注意する必要がある。
イヤホン本体もマットだが、ケースとは質感を変えることでうまく印象を変えているのがにくい。
初期状態ではイヤホンに絶縁用のシールが貼られているので剥がすこと。僕の友達は以前これを剥がさなくて「充電されない!壊れた!」と騒いでいた。SOUNDPEATS Mini Pro HSの絶縁テープには「はがす」と丁寧に日本語で書かれているのが優しい。
8時間の連続再生時間
SOUNDPEATS Mini Pro HSは小型軽量でありながら8時間の連続再生時間を持っている。ケースでの充電を併用すれば28時間の再生時間を誇る。普通8時間も音楽を聞きっぱなしにはしないので、きちんと充電ケースに戻してさえいれば充電切れの悲劇を味わう事はほぼないだろう。
その充電中は本体側面のLEDがゆっくりと点滅する。赤が20%未満、黄色が20%以上70%未満、緑が70%異常を示し、フル充電されると緑が点灯する。また充電中のイヤホン本体は赤く点灯し、フル充電されると消灯する。
ケースのバッテリー容量は300mAhと小さいので充電時間はそんなに長くはないが、5V/1A以上では充電できないため、急速充電などには対応していない。
装着感は今ひとつ
裏面にR・Lの表記があるので左右の判別はし易いが、左右どちらにつけてもさほど違和感を感じない程度のほぼシンメトリーなデザインになっている。特に何も考えずに装着したら左右を間違えそうな感じはある。
本体が片側約4.5gと非常に軽量で、また重量バランスも外側によりすぎていないので装着感自体は軽い。
しかしノズルが楕円形の上妙に短く、耳の深くまで差し込むことはできない形状なのが個人的には今ひとつ。耳の浅いところにだけイヤーピースがいて、結果的に耳の側面で支えているような感覚で気になる。長時間装着していて耳が痛くなるほどではないが、僕の耳ではしっくり来なかった。このあたりは個人差もあると思う。
試しにもう少しグリップの効くフォーム系のイヤーピースに変えてみたところ、装着感は多少向上した。ただケースにうまく収まらなかった…。
タッチ操作感は快適
SOUNDPEATS Mini Pro HSの側面は静電式のタッチ操作に対応している。反応はそこそこ良く、操作自体もそう難しくないので扱いやすい。
基本的な操作は音楽の再生・停止、曲送り、音量調節などなど。マイクもあるので通話も可能。
LDACコーデックで接続 低遅延で動画視聴も快適
SOUNDPEATS Mini Pro HSは現状のBluetoothコーデックでほぼ最高音質と言われているLDACコーデックに対応している。これにより圧倒的な情報量をイヤホンに送信することができるので、よりよい音質で音楽を楽しむことができる。Bluetoothイヤホンで問題になる遅延も少なく、動画を視聴するぐらいであれば特に違和感を覚えることはなかった。
通信強度も十分。公表値10mの接続範囲は大体その通りだが、ドアを一枚挟むと途切れるのでそこまで強くはなさそうな印象。手持ちのカバンの中にスマホを入れて使うぐらいであればなんの問題もないだろう。
ただ1時間に数回程度の頻度で音が切れるのが気になる…。これはLDACの接続レートを変えることで多少改善されるが、標準的な設定でプツプツ途切れるのはDAPやスマートフォンとの相性もあるかもしれない。周囲に人が多い環境ではどうなるのかは気になるところだが、あいにく僕にはそのような場所でテストする機会がないため不明だ。
試してみた限りSBCでは当然接続できたが、Apt-Xでは接続できなかった。なのでLDACコーデックに対応していないスマートフォンやDAPを持っている人にとってはあまり良い選択肢とは言えないかもしれない。またAAC対応も謳われていないので、iPhoneユーザーにも微妙かもしれない。(追記)メーカーによるとAACには対応しているそうなので、iPhoneユーザーでも安心して使用できる。
DAPやスマホのBluetoothをわざとOn/OFF切り替えてみたり、頻繁にイヤホンをケースに出し入れしたりしてみたが、イヤホンは即座に接続された。このあたりの使い勝手は非常に良い。
音質:モード選択で印象が大きく変わる
SOUNDPEATS Mini Pro HSは左イヤホン側面を1.5秒タッチすることで
- Normal mode(標準)
- ANC On(アクティブノイズキャンセリング)
- Pass through(外の音が聞こえるモード)
の3モードが順番に入れ替わる。これは単なる機能の切り替えかと思ったのだが、実際聞いてみると音質が大きく変化する。
Normal mode、Pass throughの音質は期待外れ
初期状態のNormal modeで音楽を聞くと、正直言ってかなりがっかりさせられる。飛行機に乗ったら貰える安いイヤホンの様にペラペラな音質で、本当にこれが8000円もするイヤホンなのかと落胆する。これは外の音が聞こえるPass throughでも同じ。
ただよくよく聞いてみると、低音から高音まできちんと音が出ているし、各楽器の音やボーカルの声の聞き分けもきちんとできる。明瞭感も悪くない。なのになぜか音がペラペラしていて艶感を一切感じない、雑なマイクで録音したかのようながさつな耳障りがある。
こんなにちゃんとしているのに音質がめちゃくちゃ悪いのは逆に驚きしか無い。一体どうなってるんだ。
ANC Onで一気に明瞭さがアップ ナチュラルで聞き取りやすい高音質
左イヤホン側面を1.5秒タッチしてANC On(アクティブ ノイズキャンセリング)モードにすると、一気に音質が変化する。これまで感じていたガサツな音がなくなり、一気にはっきり明瞭な聞きやすい音に変化。さらに重低音の迫力が明らかに増す。
どう考えてもこれがSOUNDPEATS Mini Pro HS本来の音質に違いない。というかこの状態なら8000円の値段にも納得できる。なのでこの状態できちんとレビューを行う。
全体的な音質は少し低音寄りのフラット。極端に高音が尖っていたり中音域が前に出てきたりはしないが、ウォーム傾向でナチュラルな音は耳に優しく聞きやすい。刺さりなども無く、派手さは無いが比較的真面目な音作りに思える。
その中で特徴的なのは中高音域。10mm DD単発イヤホンなので多ドライバーBAイヤホンのようなカリカリの解像度感は無いが、十分音が分離されて一音一音がしっかりと聞こえる。ボーカルの存在感がありつつも高音域までしっかりと伸びていくのが気持ちいい。
低音域も誇張しすぎない範囲で迫力があり、深いところまで鳴り響く。EDM系の曲でもしっかりと音圧があるのが楽しい。低音を意識しすぎてぼやつくということもなく、適度な響きを残しながらずっしりと鳴るドラムサウンドなのが好印象。
左右の分離感も適切。若干頭の中で鳴っているような音場感の狭さは感じなくもないが、逆にこれぐらいのほうが周りに人がいる環境下ではちょうどいいかもしれない。
強力なアクティブノイズキャンセリングで音楽に集中できる
SOUNDPEATS Mini Pro HSに搭載されたノイズキャンセリング機能は外部の音を軽減するタイプ。
40dBのノイズ軽減を実現するというこの機能、実際使ってみると周囲の音が完全に無音になるわけではないが、かなり周囲の音が軽減される印象。周りが何を言っているかは分かるが、気にならない程度まで音が小さくなる。音楽をかけていない状態でのホワイトノイズもほぼ無いので、耳栓代わりに使うのも悪くない。
ANC Onで音楽を書けると、周りでなにか音が鳴っているのかは分かるが、何を言っているのかはわからないぐらいの状態になるので、かなり集中して音楽を聞ける環境にしてくれる。
高い使い勝手とナチュラルな高音質を持つ小型TWSイヤホン
- 小型軽量で持ち運びに便利
- 連続再生8時間の長時間駆動
- ANC Onでナチュラルな音質
- 日常使いに支障ない確実な接続
- ノイズキャンセリングが強力
- ANC On以外のモードの音質が悪い
- 1時間に数回程度音が切れる事がある
- 装着感があまり良くない
- 左右がわかりにくい
- Apt-Xには非対応
TWSイヤホンとして見れば日常使いに支障ないぐらいの十二分な使い勝手と接続強度があり、ANC Onであれば満足度の高いナチュラルな音質で音楽や動画を楽しむことができる。特に連続再生8時間は、ついつい充電するのを忘れてしまううっかりさんでも音楽を楽しみ続けることができて便利に違いない。また強力なノイズキャンセリング機能は、周囲の雑音をある程度カットしたいときにも有効だろう。ホワイトノイズも殆ど無いのが嬉しい。
一方でANC On以外のモードでは音質が明らかに悪く、周囲の音を入れながらも音楽を楽しみたい場合は不満が大きいと思う(そういう場面はイヤホンを外すべきだが)。高音質なイヤホンとして考えると、実質ANC On以外のモードが選択肢としてありえない。装着感は(僕には)あまり良くないので、いつかポロッと落としそうな気もする。このあたりの不満をどう捉えるかは人によるだろう。
まとめると、SOUNDPEATS Mini Pro HSは比較的高い音質を持ちながら、日常使いに不便することのない使い勝手がある。そして強力なアクティブノイズキャンセリングによる音楽に集中できる環境を確保することができる、高性能なTWSイヤホンだと感じた。もう少しだけノズルが長くて装着感が良ければ…。
ナチュラルな音質とアクティブノイズキャンセリング機能を重視するのであれば、かなりコストパフォーマンスに優れた一台であることに間違いはない。
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