2020年で最近最も使用頻度が高かったイヤホンはTRN BA5なので、TRNの高音が気持ちいいサウンドのイヤホンを新たに一つ欲しいなと思ってた。
せっかくならフルBAのBA8が欲しいが、これはだいぶ値が張る。2020年フラッグシップのVXもいいが、他のイヤホンと買い合わせることを考えると予算は抑えたい。ということで、このイヤホンを選んでみた。
TRN V90s
それがこのTRN V90s。2019年に発売され好評を博したTRN V90の進化版だが、V90が1DD+4BA攻勢に対し、このV90sは1DD+5BAとBAが一つ増やされている。
- TRN V90s本体
- 4芯編組6N OCC純銅ケーブル
- イヤーピース
- 取扱説明書・保証書
と必要最低限の付属品が入っている。付属のケーブルはだいぶ癖が付いていた。
TRN V90sのスペック
ブランド | TRN |
モデル | V90s |
ドライバー | DD 10mm High-flux デュアルマグネティックサーキット BA 30019 ×2(高音域) BA 50060 ×3(中音域) |
コネクター | QDC |
応答周波数 | 20-20000Hz |
音圧感度 | 108dB/mW |
インピーダンス | 22Ω |
付属ケーブル | 4芯編組6N OCC純銅ケーブル 3.5mmプラグ |
アルミ筐体に片側6ユニットを詰め込んでいるV90s。進化元のV90との違いは、中音域担当のBA 50060が一つ増えたことと、背面のベントが無くなったこと、さらにDDもデュアルマグネティックサーキットドライバーへと変更されている。高音域を担当するBA 30019の2台はノズル内に収められ、それ以外はボディ側に配置されている。
アルミ筐体のハイクオリティな本体
TRN V90sはボディも背面もアルミ削り出しの筐体となっている。TRN BA5では一部切削痕がはっきりと見えていたのだが、V90sではそれすらも無くなり、つるんとした美しい仕上がりになっている。ベント穴は耳側に2か所小さく設けられている。赤と黒のアルマイト加工が美しい。サイドにTRNのロゴマークが刻まれているが、V90sの型番はどこにも書かれていない。
ノズルが少し短いので耳の奥まで刺さるタイプではないものの、本体が耳の形に添う形状であることと、重量が軽いため装着感は良好。ノズルには金属製のフィルターが装着されている。音漏れはそこそこあり、遮音性もさほど高くは無いが、音楽をかけていれば周囲の音は気にならなくなる。
耳に適度に刺さる高音が気持ちいい音質
TRN V90sは箱出し状態ではあまり音が出なかった。一晩エージングを行ったらずいぶんと音が出るようになったので、以下のレビューはその後の話となる。
TRN V90sは全域で幅広く音が出ている軽いドンシャリ気味なバランス感の良いイヤホンではあるが、重視されているのは明らかに高音。あえて耳に刺さらせるチクチク、シャリシャリとした高音域はかなり特徴的。TinHiFi T2 PLUSに近い、快感を覚える高音域を鳴らしてくる。音色は寒色系で硬質ながら、マルチドライバーによって実現した濃厚な音色を奏でる。KZ ZAXのようにパワーでごり押しするような音色ではなく、あくまでも低音から高音まで質の高い基礎を組んだところに、特徴的な高音域を上乗せしているような印象だ。
高音域は快感。シンバルやギターの鳴くような高音、ピアノの音色を気持ちよく響かせる。曲によってはシャリシャリした音が鼓膜をくすぐってくるのがとにかく楽しい。絶対的な解像度よりも音の綺麗さに振っているように思う。
中音域は他音域に比べるとわずかに引いている。が、3台も用意された中音域用BAがしっかりと支え、ちょうどいい音場感と気持ちいい解像度感、そして音の濃さを両立している。ヴォーカルから伴奏までキレよく癖なく鳴らしてくれる。
低音域はスピード感がしっかりありつつ、硬質な響きを感じる音色を奏でる。頭を激しく揺らすような強烈な音圧とまでは行かないが、ズンズンしないと絶対に嫌だという人以外は十二分に満足できる量感がある。
標準ケーブルはイマイチなのでリケーブル推奨
個人的にはリケーブルはそこまで必要では無いと考えているのだが、TRN V90sに付属しているケーブルは少々微妙な印象がある。過去のTRN標準ケーブルからはグレードアップしているはずなのだが、このままだとV90sが線の細いイヤホンのように感じてしまうかもしれない。
KBEARの純銅16芯ケーブルKBX48419broに変更したところ、ぐっと線が太くなり全音域で音の厚みが増したので、このイヤホンにはリケーブルがオススメ。
もっと評価されるべきバランス型イヤホン
TRN V90sは、特徴的な高音域を持ってはいるが、そこに至るまでの基礎が十分に高いので、癖の少ない好バランスを保っている。一聴した瞬間に派手さや楽しさを感じるイヤホンとは少し違うものの、聞けば聞くほど良さがわかるスルメイヤホンだ。KZ系の陰に隠れて不遇の扱いを受けているようにも思うが、もっと評価されるべきな完成度の高いイヤホンだ。
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