中華イヤホンが、気になる。
凄まじいパワーと技術力で既存の価格と価値の概念をぶっ壊してくる中国製品の数々。イヤホンもその例外ではなく、この数年間で恐ろしいまでのスピードで中国製のイヤホンが進化し、コストはもちろん性能面でも高い評価を得てきてきる。
そんな中華イヤホンの中で最有力ブランドとされるのが「KZ」。ラインナップも多く、その中でも「ZS10」がずっと気になっていたのだけど、最近になってその進化モデル「ZS10 Pro」が発売された。中華DAPのHIDIZS AP80も買ったところだし、この辺りで中華イヤホンに手を出してみたくなったのだ。
KZ ZS10 Pro
というわけでKZのハイエンドシリーズであるZS10 Proを購入。僕はタバコを吸わないけども、ちょうどたばこの箱を少し厚くしたぐらいのサイズ感のパッケージ。白を基調としていてなかなかのシンプルさ。
開けるとなんだか高級感の漂うパッケージがされていた。
付属品は
- ZS10 Pro本体
- イヤーピース×4サイズ
- ケーブル
- 取扱説明書
イヤーピースだが、最初から付属されているものは一般的な中サイズで、袋の中には先端に溝が彫られている大中小サイズのものが入っている。実質中サイズが2種類あるわけだが、溝付きのイヤーピースのほうが付け心地がよかった。
スペック
モデル名 | KZ ZS10 Pro |
構成 | 4BA+1DD |
重量 | 32±3g |
プラグタイプ | 3.5mm |
ピンタイプ | 0.75mm |
周波数応答範囲 | 7-40000Hz |
インピーダンス | 30Ω |
感度 | 111dB/mW |
インピーダンスは商品説明によっては24Ωだったりするのだけども、一応今回は箱の裏面に記載されているスペックシートを参照した。ちなみに、手元のKZ10 Proの実重量は31g(ケーブル込み)だった。
ハイレゾマークは記載されていないが、周波数が40kHzに達しているので区分上はハイレゾ対応イヤホンと言えるはず。
4BA+1DDのマルチドライバイヤホン
ZS10 Proは4BA+1DDのマルチドライバイヤホンとなっている。
BAは「バランスド・アーマチュア」の略称で、特定音域に強いスピーカーだと考えればOK。ZS10 Proには高音域用BAがノズル部分に1つ、中音域用×2と高音域用×1BAが本体部分に納められている。耳に近いノズル部分に高音域BAを配置することで、ガツンと高音を聞かせたいという思想が見える。
DDは「ダイナミック・ドライバ」の略で、こちらは一般的なイヤホンに多く採用されているもの。ZS10 Proでは10mmサイズのダブルマグネティックダイナミックドライバを採用し、主に低音域を担当している。
これは高級スピーカーが複数のスピーカーを使うのと同じことを、イヤホンの中で行っているのだと言える。低中高音域それぞれにドライバ(スピーカー)を割り当てることで、イヤホンの分解能を増やし、より多くの音を表現しようとしている。この手法はこれまで超高価格イヤホンにしか採用されていなかったのだけども、KZは多ドライバイヤホンの低価格化に成功したメーカーの一つなのだ。
高音×2、中音×2、低音×1、これら片側5つのドライバを樹脂製のシェルに納めて、ステンレスのフェイスプレートで覆った密閉型イヤホンが、ZS10 Proなのだ。
リケーブル可能な0.75mm銅ケーブルが付属
ZS10 Proはリケーブル可能な構造が採用されており、付属するのは4芯の銅ケーブル。個人的にはネジネジしない方がケーブル長が短くなって音質が向上するのでは?と思わなくもないが、どうもカスタム系のイヤホンってのはケーブルをネジネジさせたがるものらしい。KZ純正品も例にもれずネジネジされてる。
先端は0.75mm2PINタイプなので一般的なリケーブルに対応しているらしいが、KZ TypeCというイヤホン側に出っ張りを設けた構造になっているので、純正アップグレードケーブル以外を使うと見栄えが悪そうだし接触不良を起こしそうな気がする。
ZS10 Proはケーブル耳掛け前提の構造になっているので、イヤホン付近はこの形で固定する透明カバーがケーブルにかけられている。よく見るとケーブルの先端にL・Rの表記があるので、左右を間違えずに装着しよう。ケーブルはカチッとしっかりハマるので、そう簡単に抜けることはないと思う。
ちなみに音楽を再生しながらわざとケーブルを服に擦らせてみたり、ケーブル同士を接触させてみたりしたが、タッチノイズはほとんどわからなかった。柔らかく絡みにくいので、とても扱いやすいケーブルだと思う。
超ハイパワーの攻撃的サウンド
早速聞いてみよう。使ったDAPは先日購入したHIDIZS AP80だ。
箱から出してすぐに感じるのは、分解能が非常に高いということ。例えるならフルオーケーストラが耳の中にいるような感覚で、いろんな楽器の音がそれぞれちゃんと聞こえてくる。ただこの段階ではオーケストラメンバーが寝起きのような感じで、なんだか音がシャキッとしない。
ただ30分ほど音楽を流しておくと、中高音域がかなり鳴るようになってきた。個人的にエイジングの必要性には疑問を抱いているのだけども、ZS10 Proに関しては最低でも1時間はエイジングするとかなり音が立ってくることが確認できた。試しに15時間ほど流しっぱなしで放っておいたら、1時間経過時点よりさらに低音が効くようになった気がした。気になったので2日間エイジングしてみたのだが、そこから先の変化に関しては分からなかった。
さて肝心の音質だが、
とにかくハイパワーさが半端じゃない
いわゆる「ドンシャリ」系に入ると思うのだが、低音がズンズン響いて、高音がキンキン鳴る。大抵の場合、こういうドンシャリイヤホンは中音域がおざなりになってボーカルがどっか行ってしまうような印象があるのだけども、ZS10 Proはそこもしっかりと表現されている。むしろ高音~中音~低音の全域でがっつり音を鳴らしてくる。自分の耳元でボーカルとギターとベースとドラムとシンセサイザーが全力で叫んでいるような感覚さえある。
じゃあとにかくパワーでごり押ししているだけのか?と言われれば、それだけじゃない。先にも書いたように分解能が高いので、音や楽器の一つ一つがめちゃくちゃはっきりと聞こえてくるし、切れがいいので無駄な余韻が全くない。寒色系のサウンドで音場はべらぼうに広く、変な方向から音が鳴っているような感覚や、音域によって音がバラバラになっているような感じは皆無。イヤホンとしてものすごく優秀な出来をしている上に、攻撃的なハイパワーさが乗っかっているのだ。
難点としては、中音のごく一部の領域でわずかにパワーが他に負けているような感覚がある。ただこれは他があまりにハイパワーすぎるからそう思うだけな気もする。あと低重音を強くアピールしているイヤホンと比べると、そこには物足りなさを感じるかもしれない。個人的には十分だと思うけど。
長時間着用で若干の痛みを感じる
また付け心地だが、外側に向けて重量が増す構造故か、長時間着用していると少し耳が痛くなった。僕にはわずかに合わない部分があるようだ。これは人によると思うし、形状は耳にフィットするようにできてるので、試してみるほかないと思う。
スマホでも使用可能なインピーダンス30Ω
ZS10 Proのいいところは、4BA+1DDという超高級機に引けを取らない構造になっているにもかかわらず、音楽再生機を選ばないインピーダンスの低さになっていることだ。実際にスマホで使ってみたが、普通の音量で音楽が再生できたし、ハイパワーな音質はそのままだった。
ロックや電子音系が似合うイヤホン
原音再生という意味でははっきり言って過剰演出で、そういうバランスのいいイヤホンを求めている人は買うべきではない。全域にかけて高い再生能力を持つとはいえ、ブルースですらロックに変えてしまうほどのパワーがあるZS10 Proは、多少なりとも再生する音楽を選ぶ。少なくともクラシック向けじゃない。
逆に言えば、ロックはあり得ないぐらいのロックサウンドになるし、エレクトロ系やアニソン系はすごく気持ちがいい。僕としてはその中二病くさい外観以外はすべて気に入ったし、見た目なんて装着している限りは自分じゃ見えないから問題ない。これだけのパワーがあれば、僕がよくイヤホンを使うタイミングである電車や飛行機といった雑音が多い環境でも音楽を楽しめるだろう。胸焼けするほどのハイパワーイヤホンが欲しい人は、絶対に買いの一品だ。
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