KZ ZSTX:中華イヤホンの定番にして完成形。高品質なチューニングで魅せる弱ドンシャリクール系サウンド

イヤホン

中華イヤホンの代名詞的ブランドであるKZ。とにかく強烈な低音を持つ寒色系サウンドに強みを見せるブランドなのだが、訳あって最近は少し購入するのを避けていた。しかしやっぱり定番が一つ欲しいなと思ったので、2020年にバージョンアップを果たした中華イヤホンのスタンダードとも言える一品を入手してみた。

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KZ ZSTX

KZ ZSTXはKZをメジャーブランドに押し上げたKZ ZSTのバージョンアップモデルで、2020年夏に発売された。従来のZSTと同じ樹脂筐体に1DD+1BAという構成は踏襲されているが、2016年発売のZSTから中身は大幅な進化を遂げているらしい。僕はZSTを持っていないが。

  • KZ ZSTX本体
  • 3サイズのイヤーピース
  • ケーブル
  • 取扱説明書、保証書

と、低価格モデルらしく付属品は必要最低限。正直これぐらいで十分。

KZ ZSTXのスペック

ブランドKZ
モデルZSTX
ドライバーDD:10mmポリマーコーティング二重磁気ダイナミックドライバー
BA:KZ 30095(高音域)
コネクター0.75mm 2pin 埋込み型
応答周波数20-40000Hz
音圧感度107dB/mW
インピーダンス12Ω
付属ケーブル4芯編組銀メッキ銅ケーブル
3.5mm L型プラグ

ZSTXはZSTと同様のシェルを持つため、コネクターは現在KZなどの中華イヤホンで主流のQDCタイプではなく、旧型の2pin埋込み型コネクターを採用する。DDは10mmの二重磁気ダイナミックドライバーだが、どうも同世代のKZハイエンドモデル(ZSXやZAX)とはまた異なるチューニングがされているとか。インピーダンスは12Ωと低めなので、スマートフォン直刺しでも鳴らしやすいはず。

付属イヤーピースはKZイヤホンでおなじみの溝付きのもの。

フル樹脂製の軽量シェルにシンプル構成のドライバー

先述の通りZSTXのシェルはZSTと同様の樹脂製。最近のKZでは珍しくなったが、ノズルまで一体成型品となっている。散々コピーされ続けた中華イヤホンの基本形状とも言える形をしているので、耳への収まりは非常によく、その軽量さと合わせて長時間使用しても耳が痛くなりづらい。空気抜き穴は背面に一箇所設けられている。

ZSTといえばこれ!ということで、今回はパープルカラーを選んでみた。それ以外にはシアン(緑)とブラックの3色が展開されるZSTXだが、そのいずれもクリアカラーとなっている。幼少期にクリアのゲームボーイなどが流行った世代なので、この感じはすごく懐かしいのと同時に心が踊る。

シェルの整形は非常に綺麗で、クリア樹脂にありがちな曇りは無し。このあたりのクオリティアップがKZの進化の一端でもある。クリアなおかげで10mmのダイナミックドライバー、そしてノズル内に配置されたBAが確認できる。ノズルには金属フィルターが設けられる。

付属ケーブルは2020年辺りからKZ各モデルに採用されている銀メッキケーブル。これの先端だけ埋込み型0.75mm 2pinに変更されたモデル担っている。細めだがタッチノイズは少なく、使い勝手は良好で見た目も美しい。

音質:高品質なチューニングで魅せる弱ドンシャリクール系サウンド

KZ ZSTXは箱出し状態からかなり高いレベルのサウンドを鳴らすので、初めて中華イヤホンを手にした人でも、一聴して驚きを得ることができると思う。ただやはり一晩エージングを行ったほうがより音がくっきりしてくるのでオススメ。

僕が聞いたことのあるKZイヤホンはZS10 ProS2、そしてZAXの3つ。ZAXは2020年末時点でのフラッグシップモデルであったので例外ではあるが、旧世代となるZS10 ProやS2は、いずれもとにかく強烈に仕上げた低音をベースとして、そこにBAを上積みして高音域のきらびやかさを演出しているようなイヤホンだった。低音を担当するDDが強烈すぎるがゆえ、迫力はすごいが音がぼやけるのが弱点でもあり、また全体的に音に歪みがあった。これが僕があまり好んでKZイヤホンを買わなかった一因となっていた。

ところがこのZSTXは、かつてのKZイヤホンとは隔世の感を覚えさせる。中国通販で$15前後、国内通販でも2500円程度で購入可能な低価格イヤホンとしては驚きの音質を持っており、個人的には$40ぐらいのイヤホンと真っ向勝負できるレベルにある。

ZSTXは硬質でハイパワーな低音と、破綻の無い綺羅びやかな高音を持っている。もちろん1BA+1DDというハイブリッドイヤホンとしては最小構成であるため、音の厚みや豊かさという部分においては超マルチドライバーモデルに一歩譲るが、シンプル構成ならではのスッキリしたサウンドは魅力的。その上かつてあった低音のぼやけや高音の歪、刺さりといったマイナスな部分が取り除かれ、聞きやすくなっている。とにかく繊細にチューニングされた、質の高い寒色系サウンドが楽しめる。

高音域は綺羅びやかでしっかり伸びる。低価格イヤホンにありがちな物足りなさ、早めに訪れる限界は感じにくく、それでいてBAならではのキレの良さ、解像感の高さを持っている。しっかり高い音まで出ているのに耳障りな部分は無く、非常に心地よく楽しい音が鳴る。

中音域は若干引き気味ではありつつ、十分な音量で聴かせる。正直にいうと引きが早めなためか艷感は不足気味なので、しっとり聞かせるジャズ系の曲だと物足りなさを感じる部分も出てくるかもしれない。しかしヌケ感のあるスッキリしたこの中音域はポップス、アニソン、ロックなどなどあらゆるサウンドに対応。正直聴き比べることさえ無ければ不満を覚えることは皆無なレベル。

低音域はKZの持ち味なだけあって非常に強力で量感たっぷり。超低音まで響く強い音圧が頭を揺らすので、クラブミュージック系を流すとかなりのパワーに驚くことになる。それなのに音のぼやけは最小限で硬質。もちろんフラッグシップモデルには負けるがこの締りの良さは素晴らしく、目の前でマッチョなプロドラマーがスティックを振っているような迫力と端切れの良さが同居している。

中華イヤホンの定番にして完成形

KZ ZSTXは一聴して明らかに他の低価格イヤホンからのレベルの違いを見せつける。それなのに単に派手で強烈なドンシャリサウンドに走るのではなく、高い纏まりで魅せて、さらに楽しいサウンドであることには驚いた。イヤホンファンならとりあえず一つ持っておくことをおすすめしたい。

付属のケーブルやイヤーピースで十分ハイレベルなバランスを持っているので、 追加出資が必要な感じもしない。一応KBEAR 16芯純銅ケーブルで4.4mmバランス接続をしてみた。線材が多い分だけ情報量が増え、全域でパワーやキレの良さが一歩上がってとても気持ちがいい(とはいえ2000円のイヤホンに2000円のケーブルつけるのもどうかと思う)。ただ若干ながら刺さりが出てくる部分があったので、ケーブルのグレードアップを図るなら銀メッキケーブルは避けたほうがいいかもしれない。

友達に「イヤホンが欲しいんだけど、何がおすすめ?」と聞かれたならば、とりあえずZSTXを挙げておけば間違いないだろう。それが沼への第一歩であることは伏せながら…。

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