オーディオにお金をかけるのって、楽しいけど怖い。特に「ケーブルチューニング」ほど恐ろしいものは無い。これはもはや宗教の領域である。
そもそもスピーカーやイヤホンを使う限り、ケーブルというものは単に元の電子信号を劣化なく運べればそれでよいわけであって、そこを変えたところでやれ「高音域が伸びる」だとか「ボーカルが綺麗に出る」だとか、そんなことはあるはずがないのだ。あるとすればよほど元のケーブルが劣化していたか、不純物が多かったか、もしくは端子が汚れているかだろう。間違ってもケーブルへのメッキの有無で音質が変わる、なんてことはあり得ない。
リケーブルを試してみる
と、理論上でいろんなことを考えていても、ただ日々を悶々と過ごすだけ。ここはとりあえず試しにその「宗教の領域」に足を一歩突っ込んでみる必要がある。
というわけでイヤホンケーブルを一本買ってみた。買ったのはNICEHCK C16。比較的安価に手に入る16芯の高純度銀メッキケーブルである。さてさて何が変わるのか。いざお手並み拝見といこう。
確かに音が良くなった
さて、さっそくだが手持ちのリケーブル可能なイヤホンであるKZ ZS10 Proを標準ケーブルからC16-4に変更してみた結果を書いていこう。
- わずかに音量が大きくなった
- 音の密度(太さ?)が増した=より多くの音が聞こえるようになった
- 多ドラハイブリッドなりの曇り感が薄らいで、はっきりとした粒立ちに変わった
- 気持ち高音域が伸びてる気がする
…嘘だろ本当に変わったわ。
ちなみにこれ、何回か元のケーブルとつけ外ししてみて同じ曲を何度も聞いてみた結果なので、プラシーボ効果は抑えられているはず。標準ケーブルに戻すと確かに音が劣化するのだ。なにこれ怖い。
特にZS10 Proでちょっと微妙だなぁと思ってた曇りがある程度解消されたのは驚いたのと同時に、満足感の高い結果だった。高音域については「気がする」レベルで、はっきりとは体感できなかった。
ちなみにKZ純正ケーブル(ブラウン)とC16-4を並べてみると、圧倒的な太さの違いが分かる。線材1本ずつはKZの方が太いのだが…。
元値が高いイヤホンだとあんまり差が分からなかった
販売価格でZS10 Proの倍となるSIMGOT EM2にもC16-4を付けてみた。
すると、こちらは標準ケーブルが4芯とは言えC16-4と同じ銀メッキケーブルということもあるのか、あるいは元からイヤホンがクリアなサウンドでかつケーブルの質も良いのか、ZS10 Proで感じたほどの差は無かった。ただわずかに音が太くなったようにも思えた。
おそらく低価格機ほどリケーブルで変わる
確かにケーブルというのは容易にケチることができる部分なので、低価格機ほど安価な素材に走ってコストダウンに走るだろう。そしてリケーブルはそれ単体で販売できるので、価格に合わせて高品質なものを使えるはず。なんて言ったってこのC16-4、普通にイヤホンを購入できるような価格で販売されているのだ。
というわけで「ケーブルチューンは効果が無い」説は僕の中でもろくも崩れ落ちた。これは宗教じゃなくて事実だった。ただ一方で、そこまでその効果は高くない、つまりイヤホンの音が激変するようなレベルではないことも事実。特にこだわりが無い人はそのままで十分だと思うが、お気に入りのイヤホンの音をさらに伸ばしたい、ケーブルの色も含め見た目をアレンジしたい、そのような目的があるのであれば、リケーブルは楽しいカスタムの一つになると思った。
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